目次
ペットの平均寿命が延びてくるにつれて、認知症などの問題も増えてきています。
愛犬・愛猫がシニアになった時の問題や、若いうちからできる対策を専門家にお聞きしました。取材・文/松永麗美
ジャペル株式会社 常務取締役 川崎 豊さん
ジャペルは半世紀以上に渡りペット関連商品の卸売事業・店舗事業・メーカー事業などを手掛けるペット専門商社。高齢ペットケアの発信基地として2021年4月に「あにまるケアハウス」を開設。
あにまるケアハウス
1泊から10歳以上の終身まで、愛犬・愛猫のお預かりを行うケア施設。3つの犬舎と1つの猫舎を備えており、340坪のドッグランなど伸び伸びと生活できるスペースを確保しています。
老犬・老猫ホーム「あにまるケアハウス」の川崎さん。
「認知症予防には五感を十分に働かせる時間が大切です。具体的には、太陽の光をたくさん浴びることと、匂いを嗅
ぎつついろいろなことを考えながら歩く時間をたっぷり持つことのふたつ。外を歩くこと=体を動かすことは筋肉を使います。動物は歳をとると筋力が落ち関節の可動域が狭くなってくるので、体を動かすことで関節を柔らかくしたり筋肉量を維持したりすることが重要。筋力を保てば代謝が活発になり食事もしっかり摂れるので、健康寿命の延伸につながります。すでに認知症を発症している場合でも、進行を抑えるために五感を働かすことは有効です」
認知症に伴う徘徊行動がある犬は後退できないためひたすら前に歩き続けてしまうが、サークルタイプであれば角形ケージと違ってぶつかることなく歩き続けられる
すでに15歳を超えているという三毛猫。人懐っこく、リラックスした表情で暮らしている。
ておいた方が良いでしょう。さらに、通院に慣れておくこともストレス軽減につながります」
断のメリットは、目に見えない異変にも早く気付けること。特に猫の場合はシニアになると腎臓系のトラブルが増える
ので、数値を定期的に確認する必要があります。猫は犬に比べて老化や不調がわかりにくい動物。見た目に明らかな症状が出ている時はかなり病状が進行している可能性が高いです」
イレのたびに外まで運んであげなくてはなりません。もしもの場合も考えて、若いうちから家の中でもペットシートなどに排泄できる訓練をしてください」
体幹や筋力を鍛えるトレーニングを、個々に見合った運動量で行うことが大事。特に大型犬などは体重がある分、後
ろ足や腰が弱りやすいので、散歩コースに上り坂や下り坂を入れることから始めても良いかもしれません」
「愛情がないとお世話はできないし、どの飼い主様も愛情をもって動物と暮らしていると思います。だけど、愛情だけではお互いのためにならない時もあります。だから、愛情に加えて知識と環境、そしてインフラが必要だと思います。
ベースにあるのは『やらなくちゃ』ではなく『してあげたい』という飼い主様の愛情。それに加えて、動物に適した健康寿命を延ばせるだけの正しい知識。健康な子には病気や認知症の予防環境、寝たきりや認知症になってしまった子にはそれを抑止できる環境。さらに我々のような施設などのインフラ面。
これらが整っていけば、幸せな時間を長く過ごせる動物はもっと増えると思います。すべての動物たちが幸せな終末期を過ごすための方法や環境づくりを、ペット業界全体で考えるべき時期にきていると思います」
愛犬・愛猫がシニアになった時の問題や、若いうちからできる対策を専門家にお聞きしました。取材・文/松永麗美
取材協力 お話をお聞きしたのは…
ジャペル株式会社 常務取締役 川崎 豊さん
ジャペルは半世紀以上に渡りペット関連商品の卸売事業・店舗事業・メーカー事業などを手掛けるペット専門商社。高齢ペットケアの発信基地として2021年4月に「あにまるケアハウス」を開設。
あにまるケアハウス
1泊から10歳以上の終身まで、愛犬・愛猫のお預かりを行うケア施設。3つの犬舎と1つの猫舎を備えており、340坪のドッグランなど伸び伸びと生活できるスペースを確保しています。
愛犬・愛猫がシニアになったらどうなる?
現在、日本国内で飼われている犬の40%が10歳以上だと言われています。そのうち一般的にシニアと呼ばれる8歳以上の犬は全体の55%。つまり、飼い犬の半分以上が実はシニア犬という状況なのです。
シニアに差し掛かった犬に発生するトラブルのひとつが、筋力低下による歩行困難。また、認知症やそれに伴う徘徊
行動、夜鳴きなども問題になりがちです。
認知症や歩行困難を抱えた動物のケアは、多くの方にとって想像以上の苦労を伴います。例えば認知症の初期症状と
して、決まった場所での排泄が困難になることが挙げられますが、歩けない動物を排泄のたびに持ち上げて運ぶのはかなりの労力を要します。飼い主が高齢な場合は体力的により難しくなるでしょう。また、徘徊行動や夜鳴きなどの症状が出てくると近隣への配慮も必要となるため、睡眠不足と相まって飼い主が精神的に追い込まれることも。
大切に思う気持ちがあるにもかかわらず、最後まで良い関係のまま暮らせないのはあまりにも悲しいこと。しかし、
「まさか最後にこんなことになるとは」という声が増えているのも、また事実です。
シニアペットにどう対応するべき?
こうした事態を避けるために重要なのが、認知症や筋力低下を予防し健康寿命を少しでも延ばすことだと話すのは、老犬・老猫ホーム「あにまるケアハウス」の川崎さん。
「認知症予防には五感を十分に働かせる時間が大切です。具体的には、太陽の光をたくさん浴びることと、匂いを嗅
ぎつついろいろなことを考えながら歩く時間をたっぷり持つことのふたつ。外を歩くこと=体を動かすことは筋肉を使います。動物は歳をとると筋力が落ち関節の可動域が狭くなってくるので、体を動かすことで関節を柔らかくしたり筋肉量を維持したりすることが重要。筋力を保てば代謝が活発になり食事もしっかり摂れるので、健康寿命の延伸につながります。すでに認知症を発症している場合でも、進行を抑えるために五感を働かすことは有効です」
認知症に伴う徘徊行動がある犬は後退できないためひたすら前に歩き続けてしまうが、サークルタイプであれば角形ケージと違ってぶつかることなく歩き続けられる
すでに15歳を超えているという三毛猫。人懐っこく、リラックスした表情で暮らしている。
若いうちから気をつけるべきことは?
人や他の動物に慣れておく
「介護の場では飼い主以外の人の手を借りることも。その際、人に触られることが怖いままだと動物自身がつらいですし、ストレスになってしまいます。この事態を避けるために、若いうちから人や他の動物と同じ空間で過ごすことに慣れておいた方が良いでしょう。さらに、通院に慣れておくこともストレス軽減につながります」
定期的に健康診断を受ける
「必ず行ってほしいのが、定期的な健康診断。若いうちから毎年、できれば半年に1 回は行ってもらいたいです。健康診断のメリットは、目に見えない異変にも早く気付けること。特に猫の場合はシニアになると腎臓系のトラブルが増える
ので、数値を定期的に確認する必要があります。猫は犬に比べて老化や不調がわかりにくい動物。見た目に明らかな症状が出ている時はかなり病状が進行している可能性が高いです」
家の中でもトイレができるようにしておく
「介護で避けて通れないのが排泄の問題。例えば歩けなくなってしまった大型犬が外でしかトイレができないと、トイレのたびに外まで運んであげなくてはなりません。もしもの場合も考えて、若いうちから家の中でもペットシートなどに排泄できる訓練をしてください」
適切な運動で筋力を保つ
「寝たきりを避けるうえで重要なのが、筋力を保つこと。体を動かすことが難しくなると認知症が進行してしまうので、体幹や筋力を鍛えるトレーニングを、個々に見合った運動量で行うことが大事。特に大型犬などは体重がある分、後
ろ足や腰が弱りやすいので、散歩コースに上り坂や下り坂を入れることから始めても良いかもしれません」
愛情はもちろんのこと、正しい知識や環境も大切
多くの飼い主やシニア動物との時間を過ごす川崎さんに、今後シニア動物と暮らす我々にとって必要なものは何かを聞いてみました。「愛情がないとお世話はできないし、どの飼い主様も愛情をもって動物と暮らしていると思います。だけど、愛情だけではお互いのためにならない時もあります。だから、愛情に加えて知識と環境、そしてインフラが必要だと思います。
ベースにあるのは『やらなくちゃ』ではなく『してあげたい』という飼い主様の愛情。それに加えて、動物に適した健康寿命を延ばせるだけの正しい知識。健康な子には病気や認知症の予防環境、寝たきりや認知症になってしまった子にはそれを抑止できる環境。さらに我々のような施設などのインフラ面。
これらが整っていけば、幸せな時間を長く過ごせる動物はもっと増えると思います。すべての動物たちが幸せな終末期を過ごすための方法や環境づくりを、ペット業界全体で考えるべき時期にきていると思います」
このインタビューがYouTubeでも見られます!
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
安心・安全・快適なペットとの暮らしをサポートする"AMILIE 編集部"
AMILIEには愛犬家住宅コーディネーター・愛猫家住宅コーディネーターの資格を持った会員の皆様が多数加盟しています。
ペットライフスタイルではペットとの暮らしがより豊かになるように住環境を...
エリア:東京都
愛犬家住宅コーディネーター